今日は、労災保険の改正について解説します。まず介護(補償)給付の最高限度額及び最低保障額が改正されました。最高限度額については特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給を参考に、最低保障額については最低賃金の全国加重平均と参考にして見直すことになっています。改正後の金額は、常時介護を要する被災労働者の最高限度額は165,150円から166,950円に引き上げ、最低保障額について、70,790円から72,990円に引き上げられました。随時介護については最高限度額は82,580円から83,480円に引き上げ、最低保障額については35,400円から36,500円に引き上げられました。
次に定期報告です。基本テキストP93~94に規定があります。今般、障害(補償)年金及び傷病(補償)年金については、マイナンバー情報連携により住民基本台帳における機構保存本人確認情報及び日本年金機構の保有する厚生年金等受給関係情報がオンライン照会により確認可能となったことから、マイナンバー情報連携により必要な情報を取得できる者についての定期報告が廃止になりました。また、傷病(補償)年金については、定期報告の際に医師又は歯科医師の診断書の添付が必要でしたが(理由は治癒していないので障害の程度が変わるため)、レセプト審査によって把握することができるため、診断書の添付が不要となりました。
次の改正は参考レベルです。障害(補償)年金前払一時金と遺族(補償)年金前払一時金制度です。当該一時金を選択した場合、前払一時金を選択しなければ定期的に支給されていた年金額(ただし1年経過後の年金額は年5分の利率で割り引いたもの)が前払一時金の額に届くまで年金が支給停止になります。(P67(4)①②の規定)この中間利率については民法の法定利率の年5分(5%)が用いられていました。今般、民法の法定利率が改正されたことにより、労災保険の利率も改正されました。
民法の法定利率については年3%に改正されましたが、当該利率は固定ではなく3年ごとに見直されます。そのため、労災保険については、年5分を「算定事由発生日の法定利率」に変更しました。ところで、法定利率についてはもう一か所出てきますが、どこかわかりますか? 事業主責任災額の損害賠償との調整規定です(P115)。履行猶予額及び免責額を算定するときに、損害発生時の法定利率により計算される利息分を控除して算定します。その時に使う利率も年5分から算定事由発生日の法定利率に変更されました。当面3分ということになります。こちらは講義でお話ししました。レジュメを持っている方は労災保険4のレジュメP7に年3分で計算した履行猶予額の計算式を載せていたので見ておいてください。試験対策としては念のため、「算定事由発生日の法定利率」という言葉を抑えておけば大丈夫です。
政府は緊急事態宣言の期限を5月31日まで延長しました。今まで以上に厳しい経営状態になる事業主の方や収入がなくなるフリーランスの方が増えると思うと心が痛みます。皆さんも仕事や家庭生活と勉強の両立で大変だと思います。無理をしないでやっていって下さい。