今日もまず労基法の時効について解説します。前回までで賃金と年休の時効についてお話ししました。それ以外の災害補償その他の請求権(帰郷旅費、退職時の証明、賃金を除く金品の返還)は現行法の2年のままです。まとめると、時効の改正は賃金請求権のみで5年(当分の間3年)に改正と、消滅時効の起算点が「これらを行使することができるときから」であることを明確にするために条文に入れてきた点です。
次に抑えておいてほしいのは付加金です。覚えていますか?基本テキストだとP193に載っています。付加金を請求できる場合は、解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年休の賃金を支払われない場合でしたね。付加金は使用者が支払わなければならない未払金と同一額で、裁判所は使用者の義務違反があり、労働者から付加金請求の申立があった場合に、支払いを命ずることができるというものです。この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければなりませんでしたが、今般改正があり、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則は、違反のあった時から5年以内(当分の間は3年)とされました。
次に記録の保存です。こちらも改正がありました。記録の保存は紛争解決や監督上の必要から、その証拠を保存する意味で設けられていることを踏まえ、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則5年(当分の間3年)に改正されました。次に記録保存期間の起算日です。賃金台帳及び賃金その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿、タイムカード、労使協定など)の保存期間については、賃金の支払期日が記録の最後の記入又はその完結より遅い場合には、支払期日を起算日にすると規定されました。例えば賃金が月末締の翌月15日払いの会社だとします。そうすると4月分の賃金計算期間は4/1~4/30でタイムカードの完結の日は4/30です。4月分の賃金支払日は5/15になるので、この場合5/15が記録保存の起算日になり、ここから3年になります。また、今回の改正に併せて賃金台帳の条文も確認しておきましょう。
最後に一つ問題です。非常時払、休業手当、出来高払いの保障給の時効は何年でしょうか?
答えはすべて5年(当分の間3年です)。これらも賃金に該当するからです。労基法24条の賃金の支払いの時効だけが当分の間3年になるのではありません。割増賃金や年休中の賃金、金品の返還(賃金に限る)などももちろん賃金になるので時効は当分の間3年ですね。