前回は賃金の時効についてお話ししました。今日は年休の時効と合わせて復習もしていこうかなと思っています。
まず年休の時効については改正なしで、2年の現行法を維持しました。理由は現行法では消滅時効は2年のため、残った日数は翌年度に繰り越されますが、仮に消滅時効時間5年と長くしてしまうと最大100日(20日×5年)の年休が取得できることになってしまいます。これは、労働者の健康確保や心身疲労回復の年休制度の趣旨にそぐわないこと、また年休の取得率の向上という政策に逆行するおそれもあります。使用者からみても100日の年休を退職時にまとめて請求された場合、その影響は非常に多きいものになります。そのため、年休の時効は改正なしの2年を維持することになりました。
ここからは年休の復習をしていきましょう。年休の法的性質の解釈です。ここで抑えておいてほしい判例は、白石営林署事件(最2小判S48.3.2)と国鉄郡山工場事件(最2小判S48.3.2白石と同日です)です。白石営林署事件はテキストに載っていましたね。国鉄郡山工場事件はテキスト不掲載ですが、ともに2分説を採用している点は同じなので白石営林署で抑えておけばよいでしょう。
それでは2分説とはどのような学説でしょう。これは、年休の権利は2つの権利で構成されており、区分して捉えるのが解釈として妥当というものです。まず、一つ目の権利は39条1項の要件を満たせば法律上当然に生ずる権利であるという、いわゆる年金権です。基本テキストP130アドバイスに載っています。もう一つの権利は時季指定権です。基本テキストP133に条文と判例が載っています。確認しておきましょう。
もう少し深堀します。年休の取得については、労働者の具体的な「時季指定」がない限り、使用者は年休を与えなくても労基法違反になりません。皆さんの会社にも年休の時季指定を全くせず、年休が全部残っているような人はいませんか?これでは、健康を害してしまいますよね。そこで、労基法では、労使協定で定めをした場合、年休の5日を超える部分については「計画的付与」を認めています。また、年休が10日以上の労働者に対して、年休付与日から1年以内に5日について、取得時季を指定して取得させなければならないとの規定を置いています。
また、労働者の時季指定の例外として、使用者に時季変更権も認められていますのでテキストで確認しておきましょう。今回は、講義とは違った視点でお話ししてみました。判例から年休のポイントを見ていくと、テキストの見方も変わって面白いかなと思います。白石営林署事件は有名な判例なので試験対策としても抑えておいてください。
ブログを始めたころは、緊急事態宣言が5月6日に解除され、講義が始まることをかすかに期待していました。5月末まで延長となると、講義の開始がさらに先延ばしになり、法改正の講義もできなくなってしまいます。本当に残念です。受験生の皆さんもお辛いことと思います。でも何とか毎日勉強を続けてください。私も休講が続く限りブログで応援していきます。